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「東京における居住支援について」 阿部美樹雄

2009年10月16日

東京における居住支援について
町田福祉園
統括施設長 阿部美樹雄

 現在、日本における知的障害者の数は平成17年の国勢調査の療育手帳の保持者の54万7千人とされ施策が作られています。しかしながらデータの信頼性がはかれる先進国では、アメリカは2.4~2.9%でイギリスでは2~2.5%です。先進国においては1.5~2.5%とされています。
 日本の数は0.43%にすぎず政策立案上に基礎数が違っているものと考えられます。

 知能指数の正規分布曲線によると知的障害とされる一つの指針であるIQ70未満は2.25%、いわゆる発達障害を含めると15.9%になります。日本における知的障害者は300万人前後と捉えるのが妥当であると考えられます。
 また、年齢の分布では30歳以上が44%、40歳以上では24%になります。

知能指数正規分布曲線.JPG

 東京が国の1割の人口とすると30万人前後の知的障害者がおりその中で40歳以上の方は24%、7万人強いることになります。
 都内、都外、他県施設での入所数8千人、CH・GH2千人強合わせて約1万人が暮らしの場の支援を受けています。7万人からこの1万人を引くと40歳以上の方で暮らしの場の支援を受けていない人は6万人前後と思われます。この方たちの親たちの年齢は70歳代、80歳代であると思われます。

在宅 知的障害児(者)年齢分布.JPG

 施設入所を希望されている人たちは20年以上前から約千人です。「親亡き後」の問題は現在でも変わっていません。それどころか、今後急速に養護性の高いニーズが増えていくものと思われます。その数は上記より数万単位で存在することは容易に推察できます。また、同様の理由よりショートスティのニーズへの対応も必要になります。

 私たち社会福祉事業者はこれまで以上に障害を持たれている人たち、またその家族の方たちが、安心して暮らせていける地域を作り出していくために、東京都との協同作業をしていかなければならないと考えています。そのため東京固有の問題についての認識を共有していなければならないと思います。
 以下いくつか表現させていただきます。

  1. ノーマライゼーションの理念は福祉の普遍的な原則です。障害を持たない人たちと可能な限り変わらない暮らしを保障する必要があります。そのためには都内、とりわけ23区内でのGH・CHが作りやすく、運営も安定するための財政的な支援等推進していただき福祉ニーズの高い人たちの安心、安全に包まれ自尊心の持てる東京を作りましょう。

  2. 都内には前述したように圧倒的な量の支援ニーズがあります。そのため経過的にも入所施設等新設が必要です。また、都外施設が果たしてきた役割は今後も変わりません。都外施設の所在地においてGH・CHの設置しやすい環境を作っていきましょう。

  3. 軽度の方でも集中的に支援が必要な時期があります。その時期には支援度が高い水準が出るようなニーズ中心のソーシャルワークが機能するような東京を作っていきましょう。

  4. 重症心身障害者の暮らしの場は極めてそのニーズに比して少ないのが現実です。どんなに障害が重くても東京に住めるような制度にしましょう。

  5. 障害を持たれている方たち一般の人たちと比べ診療を受けられないということは有馬正高氏が監修した「不平等な命」に記載されています。障害を持たれている人たちが診療を受けられ、入院ができるような医療体制を確立しましょう。

  6. 首都圏で日本の人口の三分の一が住んでいます。とりわけ東京はその人口の多さのため国の法律以上に支援が必要なことも様々あるように思います。「いきにくさ」の中にいる人たちが大切にされているということがその国の文化の指針ともいわれます。文化都市東京を作りましょう。

以上

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